カウンセラーのつぶやき

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    豊かな感情生活を

共感脳と論理脳
 いろんな方のお話を伺っていると、筋道を立てて論理的に話される方と、拡散的ながら感情を込めて語られる方とがいらっしゃいます。もちろん、単純に二分されるわけではなく、同じ方が時には論理的であったり時には拡散的であったりもします。
 論理的に整序された語りをするときは図の脳マップでいえば、頭頂葉の知識・判断・理解の領野が働いて、拡散的、感情的な語りでは、前頭葉下部の感情野がより活発に働いています。
 この感情野には共感回路があり、ミラーニューロンという脳神経細胞が人の気持ちを感じとる働きをしているそうです。それで、感情脳は共感脳ともいいます。
私たちは、論理脳が優位なときには、正論を語りがちです。正論はしばしば常識的で当たり前の中身を持ちます。「しっかり勉強しないと、いい中学校へ行けないよ」とか、「早く寝ないと朝起きられないよ」などです。共感脳が優位なときは、勉強に手がつかないのはどうしてかなとか、眠れないのはなにかわけがあるのかもと、子どもの心にまず心が向きます。
なぜ子どもを叱るのか
論理脳に偏りすぎて未熟な親は、子どもを責めがちです。子どもを叱るとき共感回路の働きはあまり機能せず、エゴの感情脳が活性化します。このときの子どもを叱っている基準は、「サッサとしないから」と、「みんなと同じようにしないから」です。「しない」のではなく「出来ない」のではないかとは思えないのです。この子なりのペースがあることに思いが至りません。そしてそのあげくは、「自分のいうことを聞かないから」ということで些細なことに必要以上の叱り方をします。いうことを聞かないので怒るのです。自分の怒声に刺激されると体罰を加えます。親の五分の一以上が体罰を加えているといわれています。中には「しつけには体罰が必要だ」と確信している親もいます。
子どもの叱り方
「叱るよりもほめろ」ということばがあるくらいですが、どうしても叱りたいときの叱り方を述べておきます。
(1) 子どもを上手に叱る方法
  ①子どもと同じ目線で、子どもの目を見て、愛情を持って叱る
  ②理由をきちんと説明して叱る
  ③叱るタイミングも重要
  ④子ども自身の言葉で反省させる
  ⑤叱った後のフォローも重要
(2) やってはいけない叱り方
  ①感情的に叱る
  ②子どもの言い分を聞かずに、叱る
  ③くどくどといつまでも叱り続ける
  ④自分の都合で叱る
  ⑤両親が一緒になって叱る
  ⑥誰かと比べて叱る
  ⑦昨日と今日で言うことを変えている
  ⑧全人格を否定する言葉や子どもを突き放す言葉をいう
  ⑨以前のことまで引っ張り出して叱る
  ⑩愛情のない体罰をくわえる
叱りたい感情をコントロールできるのか
 我が子を叱ってもよその子を叱ったりはしないようなことからみれば、よそ事であればコントロールできているのでしょうか。我が子のことであっても外部規制が働けばコントロールできる人もいます。家庭内のことで外部規制がなければ、自分のイライラを子どもにぶつけてしまいます。
叱る前の感情の昂ぶりに気がつくようであれば、深呼吸してみることです。そしてその場から離れることです。流しで洗い物をする、トイレや風呂場の掃除をする、庭の草むしりをするなど孤独な作業で気持ちを鎮めることです。無用な叱りの回数を減らしましょう。
感情の発達
 子どもの感情は図のように発達します。生まれたばかりの時は胎内環境から空気中に放出された興奮です。
 生後一年くらいで基本的な感情は出そろいます。喜び、驚き、悲しみ、恐怖、嫌悪、怒りなどです。文化差とは関係のない人類共通の感情です。保育所へ通うなど他者との接触の拡大につれて、他者との人間関係から生じる、悔しい、うらやましい、情けない、罪悪感、恥などの社会感情が分化します。これがだいたい5歳くらいです。これは家庭や社会の文化の影響を受けます。その後この感情が複合化していくのです。「お母さんのこと好きやけど嫌いや」「あの子のことうらやましいけど憎たらしい」「かわいいけどいじめたい」などなどです。
心の理論
この分化の過程で3歳から4歳の間に、自分と他人とでは感じていることが違うのだということに器か付きます。それを出発点として、見えない人の心を想像する自分なりの理論が形成されていくのです。
これについてはこのシリーズの「心の理論」の項をお読み下さい。心の理論の形成が不十分ですと、KY(空気が読めない)、BY(場が読めない)ということになります。
豊かな感情生活を
さて、わが子の心を読み解くにはどうすればよいのでしょうか。それには共感脳を活性化させることです。
そのために
①子どもの心にご自分の心を向けることです。
②ご自分の価値観が学力至上主義に汚染されていないかに気かつくことです。
③子どもの話は相づち多めにしてじっくりと聞くことです。
④その際、事柄にとらわれずに気持ちに心を傾けることです。  
⑤感情表見にはしっかりと応答することです。You feel (感情),because (事柄).と  
⑥ユーモアや冗談で家族を笑わせることです。  
⑦好きな趣味を持ち、心から楽しめる時間を増やすことです。  
⑧童心にかえって子どもと一緒に遊んだり、スポーツで汗を流すことです。
⑨好きな写真や絵画などをあちこちに掛けておき、美しい、綺麗だなどと楽しむことです。  
⑩テレビを観るときには娯楽番組にして大いに笑うことです。  
⑪嬉しい、楽しい、面白い、美しいなどの言葉を多く使うことです。
yao.jpg八尾 勝(やお まさる)
博士(臨床教育学)、臨床心理士
日本カウンセリング学会認定スーパーバイザー

大阪教育大学附属池田小・中学校スクールカウンセラー、大阪府教育委員会スクールカウンセリング・スーパーバイザーを歴任。一方、大阪女学院短期大学などで心理学の非常勤講師としても勤務。臨床に基づいた研究活動、各方面へのメンタル・サポート活動の普及などのため、東奔西走している。
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